2つのラインで釣る新釣法

流れの速さと強さを知る
 釣り場には必ず流れがある。河川の流れ、港湾のストラクチャーによって複雑化する潮流、サーフの離岸流などのカレント、磯ではサラシのように叩きつけ砕ける流れと吹き付ける強風の影響もアングラーは考慮しなければならない。
 その流れを読んで的確にターゲットの射程距離にルアーを届けなければならないのだが、デイゲームでさえ目視だけに頼ると得られる情報は極端に少ない。ましてやナイトゲームともなると想像や経験に基づく予測の世界となる。
 そこで、何をすれば流れの状況を掴みやすいのか?と言うと、ラインを結んだルアーを投げてみるのである。キャストし、糸フケを取り、ごく軽いテンションをかけた状態で流してみると中級以上のアングラーであれば、おおよその状況は掴めるのではないだろうか。
 その時に、全く手応えの無い、例えば割り箸のような物とブリブリ泳ぐディープダイバーを比べた場合、どちらがルアーの位置や流れの状態を把握し易いだろうか?

 

アタリを10倍感じる方法
  ラインがピンと張った状態と、くしゃくしゃになって弛んだ状態。どちらがアタリを取りやすいかは明確である。流れや風に大きく流されたラインではアタリを取ることは難しい、回収段階で向こうアワセでフッキングしていればラッキー(こういう状態で釣っている人も多いと思う)だが、逃しているバイトが数多くあるというのが私の考えだ。
 つまりはラインとロッドが常に広角を保ち、且つラインが張り詰めず、ユルユルに弛んでいない状態(図1)が一番アタリを取りやすいのだ。当たり前のことだが、これを流れの中で実現するのは意外と難しい。
 逆にピンピンにラインを張りすぎた場合はバイトをはじいてしまいショートバイトとなる。これを回避するには、意図的に適度な弛みを作る必要がある。流れ下流方向に対する少しの弛み、足場が高い場合は水面方向への少しの弛みがバイトのショックを吸収するクッションとなり確実なフッキングへと繋がるのだ。
 因みにApiaテスターRED中村氏が得意とする磯の「ウインドドリフト」と呼ばれるテクニックは、風にラインを吹かせてキャストし難い場所へルアーを送り込む方法なので、アタリを取りやすいかと言うのとは別問題である。いくらアタリが取れる状態でも魚が居なければ意味が無い、つまりウインドドリフトは魚の目前にルアーを届けることを最優先にしたメソッドなのだ。

図1

 

その角度は間違っている
 釣りには2つのラインがある。釣り糸というライン(糸)とプロダクティブゾーンと呼ばれるライン(線)だ。よく「点の釣り」と「面の釣り」という表現があるが、この面の釣りの面にあたるのがプロダクティブゾーンである。
 図2のように橋脚に対し、AのようにU字を描いてターゲットに点で接する場合と、Bのように流れに沿ってナチュラルに流す場合、どちらのほうがチャンスが多いか? さらにはより深いバイトを得ることができるだろうか?
 答えはBである。リアクション狙いの場合もモチロンあるが、総じてBのほうがチャンスは多い。ここで重要なのはBを実現する時、ラインスラッグを出したまま完全にナチュラルドリフトさせてしまうと、前述のようにアタリは取りにくいし、まず高活性の魚しか食って来ない。なぜなら完全なナチュラルドリフトは、魚にとってゴミと同じなのだ。「流れ+α」のスピードがルアーに生命感を与えると私は考えている。
 ではどのように流れ+αの状態を作り出すか? それはズバリ「メンディング(糸さばき)」である。
 フカセやフライなどでは当たり前となっているメンディングだが、意外にルアーの世界では浸透していない。フカセの場合は撒き餌に付け餌を完全に同調させるためのメンディング、フライの場合は糸にフライを引っ張らせない前述のゴミのような状態を作るためのメンディングであり、積極的にアタリを取ったり、ルアーをナチュラルに泳がせるためのメンディングとは少し違うのだが、「着水すれば巻く」というルアーマンの思い込みがルアーにおけるメンディング発展を阻害してきたのでは?と考えている。
 つまり流れを釣る方法としてルアーマンのロッドやラインの角度は大半が間違っているのだ。きちんとメンディングができて「巻かないで釣る」ことができれば釣果は数倍になる! と思うのは大げさだろうか。
 具体的なメンディングの方法は、ラインが流され過ぎないようラインをこまめに上流側へ打ち返すのである。(図3)この時ルアーが流れに対して横を向かずに平行を保つようにしたい。これが「流れ+α」の状態なのだ。
 この状態を作り出すのに最適なルアーがある。それが「流れを感じる」ことに主眼をおいて開発されたラムタラである。

図2・3

 

センサーとしてのラムタラ
 ラムタラをキャストしてまず驚くのが、今ラムタラがどこにあるのか?を感じることができるインフォメーションの多さである。決してルアーのアクションで感じるのではなく、ルアー自体の存在感(抵抗感)なのだ。
 例えば、エギを近くにキャストして糸フケを取った時、ここまでが糸フケ、ここからがエギというような抵抗感の違いを感じることができる、または海草の葉にフックが一瞬掛かって切れたと言えばラムタラの水中での存在感はイメージし易いだろうか。これがいわゆるノー感じなルアーだと糸フケを取っているつもりがリトリーブを開始していて狙うポイントから大きく外れているということになる。
 この存在感を私は「必要最低限の引き抵抗」と呼んでいるが、これがもたらすメリットは非常に多い。
 例えばルアーの位置を把握し易いので「水自体の抵抗・流速・強さ・浮力など」の状況把握がし易い、そして流れを釣るのに重要なメンディングも糸フケのみを確実にさばき、ルアーをほぼ手前に引くことが無くアクションし続けられる。
 その時、やはり一瞬ルアーを引いてしまう時もあるのだが、それが「食わせの間」に繋がることが多い。
 ラムタラはシャローレンジのフローティングミノーである。レンジは水面から30cmまでの範囲に設定されている。
 シャロー域の30cmというレンジは、さらに数cm刻みにできるほどターゲットが捕食するレンジがシビアなことが多い。当然レンジ調整が必要なのだが、これもラムタラの自らの居場所を伝える存在感ゆえレンジコントロールが容易である。
 因みにフックの番手を標準のST-46 #4→#5に交換すれば数cm浅いレンジへと変更
できる。これらの調整は流れの速さ、塩分濃度、ラインの太さによって変わるので試行錯誤していただきたい。
 流れを感じる→ルアーの位置とレンジが分かる→積極的にメンディングを活用できる→ターゲットにルアーを見せ続けられる、こういった理論でラムタラは開発されている。  アラビア語で「神の見えざる手」という意味をもつラムタラ。アングラーが流れを感じ、それを意識すれば後はルアーがターゲットの元に導いてくれる、そう、神の見えざる手によって。

2010年9月 濱本国彦  
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